ローカルレジェンド #25 あさくら画廊 辻修平
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テキスト:八木志芳写真:谷川慶典
「とにかくカワイイ物を作りたい」と、アーティストの辻修平は語る。
東武伊勢崎線竹ノ塚駅から徒歩15分、昔ながらの雰囲気が残る住宅街の中に突然現れるショッキングピンクの一軒家を知っているだろうか。周囲の風景と比べあまりに異質なその家は、見るもの全ての目を奪う。ここは辻の画廊兼自宅だ。
路地から見える壁は全面、ピンク色の絵やオブジェで装飾され、入るのを一瞬ためらってしまうが、インターホンを鳴らし出てきた辻を見ると別の意味で驚く。「ここまでピンクで主張した建物なのだから、全身ピンクの人が出てくるのでは」と予想していたところ、現れたのはスキンヘッドに緩めのTシャツとパンツを着込んだラッパー風の青年だった。「作る時はいつもラップを聴いている」と話す辻。しかし、彼の手から生まれる作品はどれもポップでかわいいものばかりだ。
画廊1階奥のスペース。ピンクの象が印象的
絵を描くことが好きだった辻は、東京芸術大学への進学を希望。しかし3浪の末に入学を諦め、独学で創作活動を始めた。活動を始めた頃は、豆腐屋だったという母方の祖母の家にアトリエを構えていたが、作品が増えるにつれ手狭になり、今の画廊である父方の祖母の家が、ちょうど空くことになったため、2012年8月に場所を移した。
画廊2階にも作品が所狭しと飾られている
画廊がピンクである理由を聞くと「ピンクでぐちゃぐちゃな一軒家を作ったら面白いかなと思った」と辻はとても純粋な目で真剣に語る。もちろん外観だけではなく、家の中全てがピンク色の世界だ。玄関から入ると、いきなり目の前に、ぬいぐるみなどを積み上げた高く大きなピンクのオブジェがお出迎え。天井から床まで至る所に作品が置かれ足の踏み場もないほど。キッチン、トイレ、風呂場、さらに、屋上と称した屋根の上までも辻の作品と化している。以前画廊に遊びに来ていた小学生のために作った滑り台やブランコもあり、ちょっとしたアミューズメント施設のよう。室内ではイチゴのお香も炊かれており、画廊を訪れた人間は異次元に迷い込んだような気分になるだろう。
辻が日常で使用しているトイレと風呂
この東京の外れにある不思議な画廊のうわさを聞きつけて、ポップアートに興味のある者、カワイイものが好きな10代などさまざまな人が日々訪れる。
作品はどれも独創的。セメントで作られた大きな象やバクダン、お菓子のパッケージの中央に鎮座するの仏像など。もちろんどれもピンク色で、かわいくデフォルメされている。
思わず手を合わせたくなる仏像
特に目を引くのは、瞳を大きく描いた少女のイラストだ。昔はギャル雑誌のモデルを参考に、瞳を大きく誇張した女性の絵を描いていた。しかし、アニメの萌えキャラなどの影響を受け、今は原宿系のファッションを身にまとったカワイイ女の子の作品を多く描いている。絵やオブジエに書かれた印象的な文章も、全て好きなアニメのセリフからインスピレーションを受けているんだとか。
女の子のファッションは雑誌を参考にしている
これまで制作してきた作品は1000点以上。画廊内にある作品は全て購入可能だそう。高いものは100万円から手に取りやすいものだと100円のステッカーや、オリジナルキャラクターである血を吐く赤ちゃん「吐血ベイビー」のストラップなどがある。ちなみにこの家も6,000万円で販売。「作品を置く場所がなくなってきたから、早く家を売って、新しい場所に移りたい」という辻。家が売