Noriko Ishimizu

Noriko Ishimizu

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災いとしての呪物を福に転じる、「祝祭の呪物展」が日本橋で開催

災いとしての呪物を福に転じる、「祝祭の呪物展」が日本橋で開催

日本橋のアートホテル、ビーエヌエー ウォール(BnA_Wall)で『祝祭の呪物展』が、2022年5月20日(金)から開催される。オカルトユニット都市ボーイズのはやせやすひろと、オカルトコレクターである田中俊行による呪物のコレクション展で、彼らの数百を越えるコレクション品の中から代表的な呪物が展示される。 画像提供:アシタノホラー 同展の見どころは、全て「本物の呪物」を展示している点だ。胎児や赤子の遺灰、墓の土、ハーブなどを混ぜたものに呪術師が魂を入れることで所有者の願いを叶えるといわれる「クマントーン」や、耳の部分が欠損しているせいか、所有者が突発性難聴になり、最悪の場合は命を落とすといういわくつきの「猫の置物」、以前は滋賀県の介護施設にあった、かわいがると命を落とすと言い伝わる人形「チャーミー」など、25点以上の呪物が会場に並ぶ。 画像提供:アシタノホラー株式会社大阪会場での展示内容 主催企画は、デザインと企画でホラーの魅力とアートやポップカルチャーをつなぐ事業を展開しているアシタノホラー。精霊が宿り、超常的な力をもたらすとされ、崇拝の対象でもあった呪物。近年では、所有すると災いをもたらすものの総称として語れられることも多い。 そんな呪物を「恐怖の対象ではなく、愛でてほしい」という思いから、災いとしての呪物を「福」に転じさせ、祝う舞台となるように今回の展示を企画したという。そのため、展示された呪物の背景や使用されていた国の文化、呪物の持つストーリーなどをまとめた紹介文も出品。一緒に観賞することで、それぞれの呪物が持つ個性をより深く知ることができるだろう。 画像提供:アシタノホラー株式会社大阪会場での展示内容 4月25日〜5月8日に実施した大阪に続く巡回展示となる今展。大阪会場では開催と同時に入場規制が連日続き、約4000人の来場者数を記録した。アシタノホラー代表でアートディレクターである片山さあは「想定以上の来場者数で、図録やグッズもほぼ完売だった」と話す。アシタノホラー名誉顧問のApsu Shusei(アプスー・シュウセイ)は「怖がるのではなく知る。文化を見て、そして呪物を祝ってほしい」と続ける。 画像提供:アシタノホラー株式会社大阪会場での展示内容 オリジナルグッズもユニークな切り口で展開。写真付き解説書『祝祭の呪物本』のほか、呪物のぬいぐるみである『じゅぶぐるみ』や呪物ステッカー、刺しゅう靴下などポップな呪物グッズが手に入る。 画像提供:アシタノホラー株式会社大阪会場での展示内容 開催期間は5月29日(日)まで。13〜20時(21日(土)のみ18時終了)、入場料は500円だ。呪術をテーマにした人気漫画などで存在は知っていても、実際の呪物と対峙(たいじ)する機会はなかなかないだろう。呪物に魅了されたコレクターたちが打ち出す、新たな呪物の一面が見られる貴重な展示を、勇気を出して観に行ってみては。 『祝祭の呪物展』の詳細情報はこちら 関連記事 『5月から6月に行くべきアニメ展示12選』 『「ゴールデンカムイ」を味わい尽くす、闇鍋のような大規模展がスタート』 『東京近郊、無料で楽しめる工場見学8選』 『東京、レトロ建築のミュージアム10選』 『歴史的名作に座れるチャンス、武蔵野美術大学美術館で近代椅子の展覧会を開催』 東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら
泉屋博古館東京がリニューアルオープン、日本画コレクションの記念展を開催

泉屋博古館東京がリニューアルオープン、日本画コレクションの記念展を開催

六本木一丁目にある泉屋博古館東京が2022年3月19日にリニューアルオープンした。同館は、京都市鹿ヶ谷にある泉屋博古館の分館として、2002年10月に旧住友家麻布別邸跡地に開館。近代絵画や工芸、茶道具、能面、能装束などを所蔵しており、企画展を通じて公開している。 Photo: Noriko Ishimizu 2019年末から改修工事のため休館しており、2021年9月に完成。2021年4月には館名を泉屋博古館分館から泉屋博古館東京に変更した。今回の改修ではミュージアムショップ、ガラスメーカーハリオ(HARIO)直営のカフェ、講堂を新設したほか、展示スペースを拡張。よりゆったりとした観賞が可能になった。 Photo: Noriko Ishimizu   リニューアルオープンを記念して、展覧会『泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅰ 日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京』が、2022年5月8日(日)まで開催中。展示は大阪・京都・東京の三都で活躍した近代の日本画家の作品で構成され、各都市で異なる展開をした明治・大正・昭和の日本画壇を横断的に眺める内容だ。「地域性」という観点で切り取ることで、ローカルな個性や表現を立体的に観賞できる貴重な機会である。 『柳桜図』(Photo: Noriko Ishimizu) まず目を引くのは、近年人気が高まっている木島櫻谷(このしま・おうこく)の屏風『柳桜図』だ。館長の野地耕一郎が「柳の葉がシャラシャラと音を立てるようだ」と形容する、新緑の柳と山桜を描いた作品からは春の穏やかな空気が感じられる。 右側『深山猛虎図』(Photo: Noriko Ishimizu) 日本画の革新派の一人である東京の画家・橋本雅邦(はしもと・がほう)の『深山猛虎図』は、2年間の長期修復を終えて初の公開となる。明治時代に来日したアメリカの東洋美術史家にして哲学者でもあるアーネスト・フランシスコ・フェノロサの教えを受けて取り入れたという空間の表現は雄大だ。 『人物図』(右)、『唐美人図』(左)(Photo: Noriko Ishimizu) 三都ごとに美人画を見比べるというユニークな趣向の展示も見逃せない。尾竹国観(おたけ・こっかん)の『人物図』は、東京における日本画の挿絵風表現を見て取ることができる。 櫻谷の美人画『唐美人図』は京都の日本画らしい優麗な女性のたたずまいが特徴的だ。伝統の中に革新性を取り入れ、現代の女性を題材に描いた作品で、伏し目がちな少女の表情は印象に残るだろう。 『十二カ月美人』(Photo: Noriko Ishimizu) 細長い展示室にずらっと並べられた12幅からなる上島鳳山『十二ヶ月美人』は、大阪ならではのねっとりとした色香を感じさせる表現とともに、それぞれの美人図で展開する四季の移ろいが楽しめる。 『乾坤再明図』(Photo: Noriko Ishimizu) 京都画壇に属される原田西湖の『乾坤再明図』は天の岩戸をテーマにした作品。線描ではなく面でとらえる、光を感じさせる描写に注目してほしい。 このほか、ミュージアムショップでは住友コレクションをモチーフにしたグッズや、マスキングテープ、トートバッグ、クリアファイルなどオリジナルアイテムが購入できる。 Photo: Noriko IShimizu カフェではハリオの器具で入れたスペシャリティコーヒーや紅茶、軽食を提供。店内はガラス張りになっており、緑豊かな庭を眺めながら一息つける。春の時期には桜が咲くので、展示の余韻が