Mitsui Yoshida

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「東京レインボープライド2024」でしかできない5のこと

「東京レインボープライド2024」でしかできない5のこと

タイムアウト東京 > LGBTQ+ >「東京レインボープライド2024」でしかできない5のこと テキスト:吉田ミツイ 2024年4月19日(金)〜21日(日)、国内最大規模のLGBTQ+のための祭典「東京レインボープライド 2024」(以下TRP2024)が代々木公園を中心に行われる。 野外ステージでのパフォーマンスや会場内ブース、プライドパレードなど、盛りだくさんの本イベント。祭りとしての楽しみのほか、性的マイノリティーの権利を巡る最新情報にも触れられる貴重な機会だ。 1994年8月、日本初のプライドパレードが「東京レズビアン・ゲイ・パレード」の主催で開催されてからちょうど30周年を迎える今年は、会場の規模が広がり、これまでパレードの集合場所だったエリアも含め、けやき並木通り全体がイベントスペースとして拡大。会場内を回遊して楽しむスタンプラリーや、親子連れのキッズやユースのためにフォーカスしたステージ&体験コーナー「レインボーステージ」が今年初めて新設される。 本記事では、TRP2024を楽しむための5つのポイントを紹介。公式ウェブサイトの会場マップやタイムテーブルを参考に、3日間を楽しもう。 関連記事『東京レインボープライド「30周年記念誌」のためのクラファンプロジェクトを実施』『「東京レインボープライド2024」の期間に行くべきLGBTQ+イベント』
映画「52ヘルツのクジラたち」​​インタビュー:志尊淳、若林佑真

映画「52ヘルツのクジラたち」​​インタビュー:志尊淳、若林佑真

タイムアウト東京 > LGBTQ+ > 映画「52ヘルツのクジラたち」​​インタビュー:志尊淳、若林佑真 2024年3月1日公開の映画「52ヘルツのクジラたち」で、トランスジェンダー男性の岡田安吾役として出演した志尊淳のInstagramストーリーズが話題となった。 劇中で志尊がつけていたあごひげに対して、ファンから「似合わない」という感想に、「自分でも似合ってないなとは思います(笑)」と前置きしながらも、「世の中には似合ってるか似合ってないかじゃなくて、自分がやりたいから、好きだから、自分を表現できるからでやってる人もたくさんいます」と意見を投稿。「この映画でもこのひげは必要であり、演じた岡田安吾を守る大切なものです」と、あごひげをつけるトランス男性への思いを続けた。 これに対し、LGBTQ+当事者を中心に、「真摯(しんし)に向き合っている」「安心」など好意的な反響が広がった。 本作で志尊の「トランスジェンダーの表現をめぐる監修」を務めたのは、俳優で自身もトランス男性の若林佑真。2人はお互いに「思ったことは全部言い合う」と決め、二人三脚で岡田安吾の人物像を練り上げていったという。 トランスジェンダーの表現をめぐる監修とは一体どんなことをして、どう人物像を作り上げたのか?Instagramストーリーズ投稿の背景とともに、作品に込めた思いを聞いた。 テキスト:吉田ミツイ 関連記事『日本映画界から生まれた新需要「LGBTQ+インクルーシブディレクター」とは』『「片袖の魚」主演イシヅカユウに聞く映画界のトランスジェンダー描写』
スウェーデンの男子向け性教育本が伝えるセックスで一番大切なこと

スウェーデンの男子向け性教育本が伝えるセックスで一番大切なこと

タイムアウト東京 > LGBTQ+ > スウェーデンの男子向け性教育本が伝えるセックスで一番大切なこと 北欧スウェーデンから世界16カ国語に翻訳され、10年以上多くの人々に親しまれている性教育の本『RESPECT 男の子が知っておきたいセックスのすべて』。本書の日本語版が2021年12月10日に発売された。翻訳者は、スウェーデン人の夫と同性結婚し、ブログ『ふたりぱぱ』で代理母出産から男児を授かった経緯や海外のLGBTQ+の情報を翻訳、発信するみっつんだ。 現在、夫の故郷のスウェーデンで子育て中の彼に、翻訳に込めた思いや欧州と日本の性教育の違いについて話を聞いた。 関連記事『父が2人 日本とスウェーデンのLGBT家族』『「LGBTだけじゃない性」足立レインボー映画祭主催にインタビュー』

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20世紀クィアの歴史を振り返るエロティックアート展が渋谷で開催中

20世紀クィアの歴史を振り返るエロティックアート展が渋谷で開催中

トム・オブ・フィンランド財団設立40周年を祝した特別展「FORTY YEARS OF PRIDE」が、渋谷の「ディーゼル アートギャラリー(DIESEL ART GALLERY)」で2024年8月14日(水)まで開催中だ。 「ゲイアートの先駆者」と知られるトム・オブ・フィンランド(Tom of Finland) は、第二次世界大戦後の1957年にアメリカのゲイ雑誌の表紙を飾ったことから評判を呼び、現在のLGBTQ+ムーブメントにつながるゲイ解放運動に大きな影響を与えたアーティストである。 まだセクシャルマイノリティへの偏見と差別が強烈だった時代に、トムの描く官能的で筋肉質なゲイ男性たちの開放的な雰囲気で性を謳歌(おうか)する姿は、当時の人々に勇気と自己表現の重要性を気づかせ、多分野のアーティストたちにも影響を与えた。 Photo: Miki Matsushima イギリスのロックバンド「QUEEN」のフレディ・マーキュリーをはじめ、ポップアートの旗手、画家・版画家のアンディ・ウォーホル、ジャン=ポール・ゴルチエ、トム・フォードなど。漫画家でゲイ・エロティックアーティストの田亀源五郎も影響を受けた一人。「FORTY YEARS OF PRIDE」ではトムの象徴的作品が数多く展示されており、さまざまな文化の源泉を感じることができるはず。  Photo: Miki Matsushima 日本初披露のVRでまるでロサンゼルスに旅気分 注目は日本初公開となるVR作品「TOM House the VR Experience」だ。トムが晩年過ごしたロサンゼルスの住居「トムハウス」の中を巡りつつ、交流のあった人々との写真や作品に触れられる。 館内にあるVRゴーグルを使って体験できる本作は、コントローラーの操作で、部屋を移動しながら、各室内で写真や作品、未完成のドローイングを鑑賞しつつ、解説を聞くことができる。まるで、実際に見学しているような感覚になるだろう。 展示はトム・オブ・フィンランド作品がいかに20世紀のプライドシーンに影響を与えたかが軸となっている。それは、トムの作品を管理するトム・オブ・フィンランド財団のエロティックアートに対する真摯(しんし)な思いからだ。 Photo: Miki Matsushima 新しいゲイ男性像が社会変革の原動力に この展覧会は、トム・オブ・フィンランド財団が「The 2024 Diesel x Tom of Finland Foundation Pride」と題し、ドイツのベルリン、アメリカのニューヨーク、フィンランドのヘルシンキで行ってきた、多様なイベントの一環として開かれている。 財団は、トムの作品の管理だけでなく、世界のエロティックアートの収集や次世代アーティストの育成を行うが、それはエロティックアートが、人々が「プライド」を持つ上で、大きな意味があるとの思いからである。 Photo: Miki Matsushima トムとともに同財団を創設したダーク・デイナーによれば、「何百年もの間、社会から容認されていない関係を持ってきた」性的少数者にとって、エロティックアーティストは、思いを体現する「シャーマンであり、精神的なガイド」だ。その作品はありのままの自分でいいと思わせてくれる尊厳・プライドを取り戻すアイコンであり、誇りを感じられる空間を作り出すものと捉えているという。 実際、同性愛が違法であった時代にトムが描いたエロティックファンタジーは、当時の社会やゲイ男性自身に、開放的で新しいゲイ男性像を与えた。
Photo of the Day - 東京レインボープライド2024 - 2日目

Photo of the Day - 東京レインボープライド2024 - 2日目

セクシュアルマイノリティー(LGBTQ+)の人々への理解を促す、国内最大規模のイベント「東京レインボープライド2024」(以下、TRP2024)が、2024年4月19日〜21日(日)に開催。1日目は強風による危険発生を考慮して、あえなく開催中止を発表。TRP2024の実質初日となった20日(土)は、ほとんど風もなく、気温25度を超す夏日を迎えた。 Photo: Kisa Toyoshima 日本におけるプライドパレードの始まりとなった1994年の「東京レズビアン・ゲイ・パレード」から30周年、今年のテーマは「変わるまで、あきらめない。」と銘打ち、新たな試みを行っている。 本記事では、TRP2024のにぎわいを紹介。行く予定の人、迷っていたり、さまざまな事情から行けない人も、ぜひ場内の雰囲気を味わってほしい。3日目、プライドパレードの様子のレポートも併せて読もう。 Photo: Kisa Toyoshima「JAPAN PRIDE 30th×全国プライドネットワーク」 まずは、原宿駅方面のゲートから入ってすぐの場所にある、「JAPAN PRIDE 30th×全国プライドネットワーク」のブース。日本におけるプライドパレード開催から30年の歴史を振り返る年表や貴重な映像、「私とパレード」をテーマにした寄せ書きボードなどが展示されている。また、4月26日23時までクラウドファンディングを実施中の記念冊子「PRIDE 30th」を、会場限定で500円で販売していた。 Photo: Kisa Toyoshima「第1回レズビアン・ゲイ・パレード in 東京」代表の南定四郎(92歳) このブースには、東京レインボープライドの前身となった「第1回レズビアン・ゲイ・パレード in 東京」代表の南定四郎(ゲイ・アクティビスト)の姿が見られた。南は初日のプライドステージで開催予定だったトークイベント「プライドの軌跡〜90年代、00年代、10年代。プライドが歩んできた道〜」に登壇を予定していた一人だ。 Photo: Kisa Toyoshima Photo: Kisa Toyoshima「おばビアンCHANNEL」のメンバー 50の飲食ブースの中には、新宿二丁目からの出店も少なくない。新宿二丁目のレズビアンバー「LAGOON」、「おむすびBar 八」のママなど、6人のメンバーによるYouTubeチャンネル「おばビアンCHANNEL」のブースでは、スープカレー専門店「spice&smile」を営むまおが手掛けた、スパイス香るキーマカレーが味わえる。 Photo: Kisa Toyoshima「spice&smile」のキーマカレー 新宿二丁目にある足湯カフェ&バー「どん浴」の名物、ローストビーフ丼やバインミーも代々木公園の中で食べられる。 Photo: Kisa Toyoshima Photo: Kisa Toyoshima足湯カフェ&バー「どん浴」のローストビーフ丼(普通盛り)とレモンソーダ Photo: Time Out Tokyo Editors足湯カフェ&バー「どん浴」のバインミー 新宿二丁目のメインストリート、仲通り沿いにある、オールジェンダー&オールセクシュアリティウェルカムの「アラマスカフェ」のブースでは、創業当時に売られていた「アラマスカレー」を提供する。 Photo: Kisa Toyoshima Photo: Kisa Toyoshima「アラマスカフェ」のストリレモネード(スーパーベンティサイズ)とアラマスカ
Photo of the Day - 東京レインボープライド2024 - プライドパレード

Photo of the Day - 東京レインボープライド2024 - プライドパレード

生と性の多様性とセクシュアルマイノリティー(LGBTQ+)の人々への理解を促す「東京レインボープライド2024」(以下、TRP2024)が、2024年4月20日(土)に続き、21日(日)に開催された。当初3日間の予定だったが、初日は天候不良のため開催中止となったものの、主催者発表によると2日間の延べ動員数は約27万人と、2023年の約24万人を超える大盛況となった。 Photo: Mitsui Yoshida21日の12時、代々木公園渋谷門から、多くの人に見送られパレードがスタートした 60梯団・約1万5000人による過去最大のプライドパレード 最終日となる21日に行われたパレードも、昨年の39梯団(ていだん)を大幅に上回る60梯団が参加。過去最大となる約1万5000人が渋谷の街を七色に染め上げた。本記事では大きなにぎわいを見せたパレードの様子をレポートする。 Photo: Mitsui Yoshida Photo: Mitsui Yoshida Photo: Mitsui Yoshida 子どもから外国出身者まで、多様な人々が「ハッピープライド」の一言でつながる 梯団の中には小さな子どもをベビーカーに乗せて、行進する人も多かった。「ハッピープライド!」と沿道に向かって声を張り上げると、それまで静かに見守っていた沿道の人たちもそれに答えるように、「ハッピープライド」と言葉を返していた。 小学2年生の子どもと共に親子で初めてTRPを訪れた人は、会場の熱気と明るい雰囲気を楽しむとともに、外国人の多さにも驚いたという。住んでいるエリアには外国人は少なく、我が子に、さまざまな人たちの活気ある姿を見せられたと満足げに語った。 Photo: Mitsui Yoshida Photo: Mitsui Yoshida Photo: Mitsui Yoshida たまたま並走するようにゴミ拾いをしていた男性に話を聞くと、初めて目にした​​プライドパレードの華やかさに圧倒されたと語りつつも、「これほど多くのLGBTQ+やアライ(ally=仲間や同盟を語源とするLGBTQ+当事者の支援者)の人がいるんですね」と、素直な実感を教えてくれた。 Photo: Mitsui Yoshida Photo: Mitsui Yoshida Photo: Mitsui Yoshida先導車でドラァグクィーンとともにマイクパフォーマンスを行った日出郎(左) 「トランスに生まれてよかった」と高らかに宣言 自らを「セクシャリティ迷子」と称し、毎年異なる梯団でTRPに参加しているダンサーで歌手の日出郎は、東京トランスマーチの「フロート」と呼ばれる先導車で赤い衣装に身を包み、マイクパフォーマンスを行った。 フロートに乗るドラァグクィーンとともに「トランスに生まれてよかった」と高らかに宣言。事前に言葉を決めていたわけではなく、「仲間たちに囲まれながら、沿道の人たちの声援を聞いていたら自然に出てきました」と言う。 Photo: Mitsui Yoshida Photo: Mitsui Yoshida Photo: Mitsui Yoshida左から細野豪志と公益社団法人「結婚の自由を全ての人に」理事の柳沢正和 「公益社団法人Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」の梯団で行進していた衆議院議員の細野豪志は、「TRPには10回以上来ています」と話す。「なかでも今年は節目の年だと感じているんです」。 それは、同性婚を
「来年も、生きて会おう」トランスジェンダーの人権訴える東京トランスマーチが開催

「来年も、生きて会おう」トランスジェンダーの人権訴える東京トランスマーチが開催

テキスト:吉田ミツイ 2023年11月19日(日)、トランスジェンダーの人権とプライドを訴える「東京トランスマーチ」が新宿で開かれる。 11月13日(月)〜19日は、世界的な「トランスジェンダー認知週間」として知られており、それに合わせての開催だ。初年度の2021年は400人強が参列、2022年は約1000人へと広がり、今年は3回目を迎える。 Photo: Transgender Japan いわゆる「LGBT理解増進法」の施行や、経産省のトランスジェンダー職員のトイレ利用制限を違法と認める判決、性別の戸籍変更要件の審議など、トランスジェンダーへの関心が高まった2023年。一方で、インターネット上を中心に露骨なトランスジェンダーへのバッシングも顕在化した。このような社会の中で、マーチを行う意義を、主催団体TRANSGENDER JAPAN(以下、TGJP)代表の畑野とまと、浅沼智也に聞いた。 Photo: Eisuke Hasegawa 性別戸籍変更の手術要件見直すきっかけとなった「トランスジェンダー国会」 ー性的マイノリティーのためのパレードというと渋谷の「東京レインボープライド」(以下、TRP)が有名ですが、どんな違いがあるのでしょう。 浅沼:トランスジェンダーに特化したところです。トランスマーチを始めた動機の一つとして、LGBTQ+バッシングで真っ先に狙われるのはトランスジェンダーだからです。 LGBT理解増進法成立の反対意見も、トイレ、風呂利用を巡るトランスジェンダーへの懸念でしたよね。バッシングが強くなる中、生きることを諦めてしまう当事者を一人でもなくしたいと、始めたんです。 畑野:LGBTQ+の中でもトランスジェンダーは数が少なく、トランスジェンダーが主体という団体も少ないんです。私たちTGJPは、トランスジェンダーの人権擁護、最終的にはジェンダー平等が達成された社会を目標に考えています。そのためにトランスマーチだけでなく、コミュニティーづくりも大事にしていて、当事者や支援者など29団体から協賛いただいています。広く社会に訴えるため、抗議デモなども積極的に行っています。 また、2022年10月には、性同一性障害の人の性別変更に関する法制度の見直しを訴える集会「トランスジェンダー国会」を主催しました。2023年9月末、戸籍変更に生殖能力をなくす手術が事実上必要という、いわゆる「手術要件」が憲法違反か最高裁大法廷で弁論がありましたが、トランスジェンダー国会も大きなきっかけの一つです。 Photo: Eisuke Hasegawa テーマは「楽しさ」、今つらい人が来年のトランスマーチまで生きようと思えるために ークラウドファンディングでは開催費を募集しています。昨年より目標金額が多いのはなぜですか?  畑野:目標金額が増えていますが、大幅な規模拡大を考えているわけではありません。物価高によって、去年と同額では規模を維持できないんです。ただ、「楽しい」と思ってもらえる場にしたいと思っています。去年参加してくれた人の中には、「楽しかったから今年も絶対行く」と言ってくれる人もいました。 今年はフロート(先導する車両)を4台出す予定です。先導車を兼ねたTGJP、主にトランス男性のさまざまなイベントを企画するGRAMMY TOKYO、トランス女性をサポートする乙女塾の西原さつきさん、もう1台はアライ(ally=「仲間」や「同盟」を語源とし、セクシュアルマイノリティー当事者を支援する人々を指す)の団体が乗車予定です。 乙女塾のフロートで、行
日本初開催のトランスジェンダーマーチ、約400人が参加へ

日本初開催のトランスジェンダーマーチ、約400人が参加へ

2021年11月20日、トランスジェンダーの人権とプライドを訴える『Tokyo Trans March 2021』が新宿で行われた。トランスマーチの開催は、日本で初の試みだ。主催したTRANSGENDER JAPAN(TGJP)によると、参加人数は当初50人ほどの想定だったが、結果として約400人の参加者が集まったという。 LGBTQ+のプライドを掲げるパレードは『東京レインボープライド』をはじめ、全国各地でも開催されているが、中でもトランスジェンダーは世界的にもヘイトの対象とされやすく、判明している数だけでも毎年多くの人々が殺害されている。日本でもインターネットを中心に、トランスジェンダーへの差別的な発言が多く見られ、偏見が根強く残るのが現状だ。11月20日は、そんな望まぬ形で命を失った多くのトランスジェンダーを忘れないために制定された『トランスジェンダー追悼の日』である。 開催を前に主催団体TGJP共同代表の浅沼智也は、日本初となるトランスマーチを行う意義を「トランスマーチをすることで、トランスジェンダーはどの街にも住んでいると伝えたい。私たちの存在を否定させないために行う」と話してくれた。 Photo: Mitsui Yoshida 当日、マーチの出発前には参加者のリレースピーチが行われた。ジェンダー、セクシャリティー史研究者の三橋順子や、トランスジェンダーの労働問題について相談支援などを行う労働組合、プレカリアートユニオン執行委員長の清水直子、男性や女性というジェンダーに当てはめない性自認を持つ「X(エックス)ジェンダー」当事者の自助サークルであるラベルX(エックス)代表の藤原和希など7人がマイクを取り、参加への思いを語った。 Photo: Mitsui Yoshida 新宿中央公園からスタートし、新宿西口から大ガードを抜け、靖国通りから新宿二丁目まで練り歩く。マーチには当事者だけではなく、アライ(ally=「仲間」や「同盟」を語源とし、セクシュアルマイノリティー当事者を支援する人々を指す)の姿も多く、多様性に富んだ人々が参加していた。マーチを盛り上げようと仮装をして参加した人は「こんなに人が集まると思っていなかった」と興奮気味にコメント。 東京レインボープライド(TRP)も歩いたことがあるという参加者は、「沿道の人との距離の近さを感じた。特に歌舞伎町の前を通った時は、知らない人たちが良くも悪くも興味を持ってくれ、TRPとは違う緊張感があった」と、初開催の手応えを口にした。 Photo: Mitsui Yoshida 主催団体TGJPの共同代表の畑野とまとは1990年代から、浅沼はドキュメンタリー映画『I Am Here -私たちはともに生きている-』を制作するなどして、それぞれトランスジェンダーの啓発活動を続けてきた当事者たちだ。 行進を終えた浅沼は、参加者たちに「今日まで生き延びてくれてありがとう。来年も生き延びて、また会いましょう」と語りかけた。歩きながら、自死を選んだトランスジェンダーの友人たちを思い出し、「トランスフラッグを手に歩く姿を見ていたら、死を選ばなかったかもしれない」と、目を潤ませながら悔しさを語った。 Photo: Mitsui Yoshida 日々の暮らしを懸命に生き抜く、当事者たちの姿が垣間見える場面もあった。浅沼の元へ駆け寄り、心の内を打ち明けた女性がいた。「手術をして戸籍を変えても、トランスジェンダーだと職場に伝えたことで、仕事をクビになったりもした。私も生き延びて、今日この場に来れてよ