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本作では、この男たちがある種のヒーロになる。2008年のアメリカで起こった金融破綻を、彼らのようなごく一部の人間だけが数年前に予見していた。この不愉快極まりない集団を中心に、ストーリーは構築される。原作は、2010年にマイケル・ルイスが発表したベストセラー小説『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』。同作にも描かれているが、彼らは銀行に対して大きな賭けに出て、何10億ドルもの年金や貯金は、はかなくも消え失せてしまう。
まるでギリシャ神話に登場する孤立した悲劇の預言者のような熱狂に、観客は飲み込まれてしまう。そして、エコロジー意識の高いトレーダーを演じる髭面のブラッド・ピットによって、無数の人々の生活が破滅させられるのだ。
映画『俺たちニュースキャスター』などを手がけたアダム・マッケイ監督は、この題材について過去に扱ってきたどの監督よりも、金融危機をエゴの悲鳴だと捉えている。劇中に登場するエージェントは多数の住宅を貧困層のストリッパーに売りつけて、今やストリッパーとワニは使われていないプールで暮らす。監督のおどけたユーモアは、スタンリー・キューブリック監督による映画『博士の異常な愛情』にも通じるものがある。世界経済の破綻が痛快に描かれているが、これは実際に起きたことだ。アイデアが曖昧な部分も見られるが、世紀の犯罪を充分楽しめるエンターテインメントとして描かれており、彼らがその一世一代の大勝負に勝利したことを知らしめている。