キャスリン・ビグローは、映画『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』と本作を通して、戦争映画のジャンルにおいてアメリカで最も優秀な監督になった。勇敢な戦闘を描き上げた、成人男性も涙するような大作で、戦闘が終わった後も長引く、不安に満ちた3部作と言える。本作は、1967年の夏に報道されたデトロイトを、引き裂いた人種暴動について描いている。ビグローは、現代の警察の残虐性や、暴力的な逮捕劇、怒り狂う群衆の反応などを通して秀逸に捉えていた。
暴動から数ブロック離れた場所で開催される予定だった、名門レーベル、モータウンのコンサートまでを取り上げているのには驚いた。マーク・ボールによって念入りにリサーチされたこのシーンは、人々がその夜をどのように生き抜いたかを克明に伝える。注目の若手グループ、ドラマティックスはライブを舞台裏で待ちわびていたが、緊張感が漂う状況下でイベントは中止になる。リードシンガーのラリー(アルジー・スミス)は、小競り合いを避け、アルジェ・モーテルに滞在することに。最初はパーティーで賑わっていたはずが、警官を攻撃する衝動的な工作員(ジェイソン・ミッチェル)や、怯えたオハイオ州出身の白人女性2人、用心深い黒人警備員(ジョン・ボイエガがデンゼル・ワシントンのような風格ある演技を披露する)、デトロイト警官隊の恐るべき危険人物(ウィル・ポールター)などが登場し、戦慄の一夜へと化していく。
アルジェ・モーテルでの対立は、悪名高い事件として伝説になっている。監督のビグローは、本作の最重要事項としてこの事件を描き、シンプルな表現を用いることで、かつてないまでに痛ましい作品を完成させた。1時間以上を費やしながら、手錠をかけられた容疑者たちが恐怖におののき、警官たちが独善によって恐ろしい結果を招いていく悪夢をかき集めている。評判の本作だが、刑事裁判が終わろうとも、問題が終わることはない。本作では、その余波こそが要点になって描かれている。血は洗い流せても、罪悪感は消えないのだ。
原文:JOSHUA ROTHKOPF
翻訳:小山瑠美
2018年1月26日(金)公開
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