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大人向けアメリカンコミックの悪役たちが集結するアクション映画『スーサイド・スクワッド』は、普通のスーパーヒーローや、英雄的な物語を覆す、掟破りの作品だ。デヴィッド・エアー監督(映画『フューリー』、『エンド・オブ・ウォッチ』)によって本作は、派手ではないがリアルな作風を持ちつつ、コミックの世界を巧妙に描いた裏作品のように仕上がった。
映画『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』が描かれた後の治安が悪化した世界を舞台に、冷酷かつ狡猾な政府の高官アマンダ・ウォーラー(ヴィオラ・デイヴィス)が、「我々の国の安全を魔女やギャング、ワニに託してみない?」と、悪と闘うための作戦を提案し、クレイジーな「メタヒューマン」の寄せ集め部隊を結成する。
特殊部隊「スーサイド・スクワッド」として、ウィル・スミス演じる元ギャングの殺し屋デッドショット、マーゴット・ロビーが演じる精神科医から精神病質者へと変貌したハーレイ・クイン、アドウェール=アキノエ・アグバエが演じるキラー・クロックといった悪党たちが続々と集結する。
バットマンの世界だけに、端正な顔立ちのキャラクター(バットマン役のベン・アフレック)も登場するが、結局は格好いい部隊の前ではダサい男であるように映る。劇中にはザ・ローリング・ストーンズ、ザ・ホワイト・ストライプス、エミネムらの楽曲が使用されており、そこからも本作がどこを目指しているかが分かりやすい。クエンティン・タランティーノ監督に通じるふざけた楽しさが多少ありながらも、暴力的になり過ぎない作品だろう。悪党たちはそれぞれ密かに、家族や、素敵なキッチン、庭のある生活を夢見ている。本作は悪行を賛美するわけではなく、アウトサイダーに賛辞を送るように描かれていた。
世界を救うというありふれたストーリーよりも、キャラクターに優れた作品だ。悪党たちは魅力的であり、彼らが生きる世界は興味深く、意味深でもある。大ヒット作が溢れる時代に容易なことではないが、まるで映画のテンポやスタイルの疾風を受けて入り江に寄港してきたような2時間強の作品が生まれた。
2016年9月10日(土)全国ロードショー
テキスト:Dave Calhoun
翻訳:小山瑠美