ディズニーによるアニメーション作品『ジャングル・ブック』を実写映画化した作品が完成した。ジョン・ファヴロー監督は、1967年に製作されたアニメーション版に登場するジョークや楽しさ、ラドヤード・キプリングが発表した原作小説に見られるダークさを取り入れ、さらに畏怖と恐怖の念を抱かせる効果を加えている。注意してほしいのは、トラを抱きしめるような可愛らしい作品ではないということだ。『ツイッター』上で本作は、子ども向けの、映画『レヴェナント: 蘇えりし者』だと呼ばれている。
オオカミに育てられた少年モーグリを、2千人以上の子役から選ばれた12歳の新人ニール・セディが演じている。ルピタ・ニョンゴが声を演じる母オオカミのラクシャは、モーグリを自身が産んだオオカミの子と一緒に育て、惜しみない愛を注ぎ、トラのシア・カーンが人間の子どもを餌食にしようとジャングルに現れたときに命懸けで守ろうとする。男性のキャラクターばかりが登場する設定に女性のキャラクターを加えたことで、映画製作チームは評価されるべきだ。
そして、『ライオン・キング』に悪役として登場するスカーに匹敵するシア・カーンは、今年1番の悪役と言っても過言ではないかもしれない。イドリス・エルバがロンドン訛りで演じる捕食動物は、戦いによる傷跡があり、唸声を上げ、卑劣で手段を選ばない、残忍かつ非常に危険な存在だ。
物語が中盤に差し掛かり、観客が「本作には楽曲が唯一欠けている」と思い始めるころに、怠け者で、蜂蜜が大好きなクマのバルー(声の出演はビル・マーレイ)が歩きながら『ザ・ベアー・ネセシティ』を口ずさむ。そして、サルたちの王である巨大類人猿のキング・ルーイ(声の出演はクリストファー・ウォーケン)が、モーグリの心を揺さぶりながら、ブルックリンのギャングをまとめる親分のようにゆっくりと『君のようになりたい』を披露する。
ストーリーやメッセージは少々曖昧で、完璧な作品とは言えないが、子ども時代の終わりについて感動的に描かれていた。バルーがモーグリを人間が住む村に案内しながら、悲しそうに「人間は彼を台無しにする」と語る。本作には生きるために必要な最小限のものと、それ以上にもっと多くのことが描かれていた。
2016年8月11日(木)全国ロードショー
テキスト:CATH CLARKE
翻訳:小山瑠美