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1974年にフィリップ・プティがニューヨークのワールドトレードセンターのツインタワー間にワイヤーロープをかけて綱渡りを決行したが、それは違法かつ命知らずで馬鹿げた挑戦だった。2008年のドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』で、この実話は一種の冷静なアーバンポエトリーに満ちて描かれていた。ロバート・ゼメキス監督が手がける本作『ザ・ウォーク』では、その犯罪行為がスリルに満ち溢れ、笑い(少なくとも意図的な笑い)の要素を適度に含み、偉業の困難性はすっかり省略するかたちで描かれている。
抑えきれない衝動に駆られたフィリップ・プティを演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットの狡猾な解説に惹きつけられるにつれて、本作の道化じみた部分にいくらか慣れてくる。彼のフランス訛りにも忍耐は必要だ(ジョセフ・ゴードン=レヴィットの活気が見事に影を潜めている)。それにも慣れた頃に、サーカス団の座長を演じる太ったベン・キングズレーが登場する。そして、舞台はニューヨークへと移り、チームが結束力を高める展開へ。侵入者である主人公が心の動揺を隠せない場面は、監督が奇抜なユーモアをもって描いていた。
地上110階の高さのシーンでは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を手がけたロバート・ゼメキス監督が本領発揮しており、俳優たちに流れる愛嬌ある弛緩、鮮やかな3D映画撮影技術、天候や危険がはっきりと伝わる感覚、フィリップ・プティが足下に広がる都市に挨拶しながら感情的に熱狂する瞬間をまとめ上げていた。
そして、実話から不適切な部分は削除されている。たとえば、フィリップ・プティは「クーデター」を決行した後すぐにグルーピーの女性とベッドに飛び込み、冴えないが忍耐強いガールフレンドのアニー(シャルロット・ルボン)と祝杯を上げるディナーをすっぽかした。しかし、ありふれた喜劇を補うには十分無謀な活力に満ち溢れる作品が完成した。
2016年1月23日(土) TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
テキスト: JOSHUA ROTHKOPF
翻訳:小山瑠美