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ギャスパー・ノエ(映画『アレックス(原題:Irrevérsible)』など)は、これまで物議を醸すことを恐れたことはない。それは本作『クライマックス』も例外ではなく、激しい騒音と吐き気を催すようなカメラワーク、 胸を高鳴らせる官能的な世界が映し出されるのだ。
エンドロールで始まる本作は、フランスのダンスグループ(アルジェリア系フランス人の女優でダンサーのソフィア・ブテラを含む)に所属するメンバーのビデオインタビューから始まる。インタビューが写るレトロなテレビの横には、今後の混乱を予感させるたくさんの本と映画のビデオテープ(ダリオ・アルジェントの『サスペリア』も!)が置いてある。
そして、場面はパリ郊外の遠隔地でのダンスリハーサルのシーンに突入する。ダンサーのアクションは、魅惑的な長いテイクで撮影され、1人のダンサーから次のダンサーへと、まるで催眠術のようにシフトしていく。その後、アフターパーティーが始まり、LSDが入ったサングリアを飲んでしまったダンサーたち。次第にその部屋は不穏な雰囲気に満ちていく……。
独創的で魅惑的、地獄のような本作に対する評価は、賛否両論だ。カメラワークはカオスに突入し、物理的な劇場は狂気を感じさせる赤といたずらな緑のパレットと融合し、常に耳がズキズキするようなテクノミュージックが流れる。
ミュージカルであり、政治学でもあり、少しだけダンテ・アリギエーリの代表作『神曲』を彷彿(ほうふつ)とさせる本作は、これまでにないほど退廃的、そして悪魔的だ。
原文: JOSEPH WALSH
2019年11月1日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開