寝台列車オリエント急行の客室で起きた殺人事件の解明に、探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)が挑むさまを描くミステリー『オリエント急行殺人事件』。アガサ・クリスティーの小説を映画化した本作は、煌びやかに描かれており、心を奪われるような豪華キャスト陣が集結している。監督シドニー・ルメットが1974年に制作した映画と同様に、1930年代のヨーロッパが舞台だ。
身の危険を感じながらオリエント急行に乗車する、アメリカ人マフィアのラチェットをジョニー・デップが演じ、彼の執事エドワード・マスターマンはデレク・ジャコビが務めた。そのほかにも、秘書のヘクター・マックイーン(ジョシュ・ギャッド)や、ドラゴミロフ公爵夫人(ジュディ・デンチ)、宣教師のピラール・エストラバドス(ペネロペ・クルス)らが登場する。豪華俳優陣が勢揃いしているが、ルメットが手がけた作品のように、アカデミー賞で多数ノミネートされることはないだろう。
スクリーン上で不気味に映し出される立派な口ひげをたくわえたブラナーは、大袈裟な演技を披露しており、気取ったジョークは古臭くてつまらない。ほかの俳優たちも、まるで音を立てる列車のブレーキのように時代遅れな台詞が多く、いかにクリスティーの作品を現代の観客向けにアップデートすることが困難になりつつあるかを示唆していた。撮影監督ハリス・ザンバーラウコスによる撮影技術は散漫に感じられ、雪に閉じ込められた車両を上下左右から撮影したシーンでは、まるで列車が巨大なキャンバスに留め付けられているように映った。
一方、未亡人のハバード夫人を演じるミシェル・ファイファーは、素晴らしい演技を披露し、感動的なシーンを演じている。映画『マザー!(原題)』での好演に続き、2017年はファイファーの演技が光る年だった。鉄道会社の重役ブークを演じるトム・ベイトマンの演技も非常に楽しめた。登場人物がやや多すぎるとしても、テンポよく物語を描いており、犯人探しを楽しむミステリー作品として最後まで緊張感が保たれていた。
原文:ANNA SMITH
翻訳:小山瑠美
2017年12月8日(金)全国公開
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