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映画『アレックス』、『エンター・ザ・ボイド』などを手がけたギャスパー・ノエ監督が、3Dでセックスを映し出す映画『LOVE【3D】』を完成させた。あらゆる性描写に溢れる、エロティックな作品だ。卑猥な台詞、隣人との関係を描くストーリーなど、ポルノ映画が持つ欠点も多く見られる。ギャスパー・ノエ監督は、露骨な挿入までは描くことを避けているが、出演者たちが実際に激しいセックスをしていないとは想像しがたい。最終的に感じたのは、愛とは浅ましいというよりも愚かなものであり、蜜月の後には少々感傷的になるものだということだ。多くのティーンエイジャーには好まれるが、たいていの大人を呆然とさせる作品だろう。
冒頭のシーンで、パリで映画を学ぶアメリカ人の青年マーフィー(カール・グルスマン)に、恋人のエレクトラ(無名の新人アオミ・ムヨック)が手淫する場面が描かれる。その後、2人は破局を迎え、現在は太って口ひげをたくわえたマーフィーは、かつて隣人だったオミ(クララ・クリスティン)と小さな子どもと一緒に暮らしており、あまり幸せそうではないことが分かる。映画『アレックス』と同様に、過去を振り返る形式を取りながら、ドラッグ、裏切り、そして数々のセックスを経験した後に、マーフィーとエレクトラの関係は終焉を迎えたことが明かされる。本作はより頻繁に時間を飛び越え、まるで映画『ブルーバレンタイン』がパリに舞台を移し、より卑猥かつ攻撃的に描かれ、暗めの映像と過激な性描写、そして製作費をかけた3Dでの撮影を加えられているようだ。
決してギャスパー・ノエ監督を空虚なエンターテイナーとして片付けることはできない。身勝手で不穏な下降をたどる夜の雰囲気を漂わせた作品を作り上げる術を知っている稀少な監督だ。また、人間が持つ自らの運命を台無しにする自滅の力に対して敏感でもある。本作には、セックス抜きで強い印象を残すシーンも存在する。特に、マーフィーとエレクトラが歩き、会話を交わす流れで映し出される2ヶ所の長いシーン。最初は彼らのロマンスの始まりに、そして次は彼らの関係の終わりに描かれている。
しかし、監督自身がウィッグをつけてエレクトラの年上の元恋人として出演するふざけたシーンを描いたことで、あらゆる真剣な意図を台無しにしてしまったのは致命的だ。また、目に余るほどの自伝的要素が含まれており、それは観客の注意を散漫にさせ、監督の自己愛を感じさせる。大胆不敵な良作になる可能性が見えたが、所々で衝撃を与える必要性を追求したことで、その可能性が消えてしまった。
2016年4月1日(金)新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
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テキスト: DAVE CALHOUN
翻訳:小山瑠美