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『スター・トレック BEYOND』は、観客を興奮させ、笑顔にさせるために、映画製作者たちが努力しているのが伝わってくる作品だ。1998年製作の『スター・トレック/叛乱』以降のシリーズにおいて、クラシックなテレビドラマのエピソードに1番近いように感じる。
本作では、エンタープライズ号は不時着した宇宙船の謎を追って探索に出発するが、無数の飛行物体の急襲を受け、岩に覆われた危険な世界でクルーは散り散りになる。そこで英雄的な活躍を見せるのが、カーク(クリス・パイン)とスコッティ(サイモン・ペッグ)。脚本も共同で手がけるサイモン・ペッグは、自身の役回りを著しく高めている。一方で、スポック(ザッカリー・クイント)は、適切に知性に訴えながら、自らの人種の未来を恐れ、先人の死について悲しみに暮れている。前作までスポックを演じた故レナード・ニモイを追悼しており、感動せずにいられない。また、撮影後にチェコフ役のアントン・イェルチンが悲劇的な死を遂げたのは記憶に新しいが、彼にも追悼の意を表している。
しかし、それでも喜びで舞い上がる雰囲気が前面に出ている作品だ。最初にクルーが惑星に足を踏み入れて以来、生き生きとした感覚で冒険や仲間とのつながりが描かれる。映画『ワイルド・スピード』シリーズを手がけるベテランのジャスティン・リン監督は、前作まで監督を務めたJ・J・エイブラムスを超える真のアクション映画の監督であり、戦闘シーンでは雷鳴のような轟音がとどろき、重力に挑む宇宙基地でのシーケンスは驚異的に描かれていた。
弱点となるのは、悪役だろう。イドリス・エルバがトカゲのような顔を持つ精神病質者クラルを熱演するが、彼は理不尽な怨念に突き動かされて戦う筋骨隆々の戦士の1人に過ぎない。ストーリーが揺らぐような矛盾点もいくつかある。しかし、全体を通して楽しく、気の利いた言葉、殴り合い、爆発、追跡、そして目を見張る効果に溢れ、お祭り騒ぎのような作品である。
2016年10月21日(金)全国ロードショー
テキスト:Tom Huddleston
翻訳:小山瑠美