アメリカの2大情報機関であるCIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)にて、情報収集活動に携わっていたエドワード・スノーデンが、アメリカ政府の機密情報を告発するという事件が起こった。2013年6月、ある3名を香港のホテルの一室に呼び出したスノーデンは、自らの正体と、彼が名乗り出た理由を明かす。ホテルに呼び出されたのは、フリーランスジャーナリストのグレン・グリーンウォルド、イギリスの新聞『ガーディアン』のジャーナリスト、ユーウェン・マカスキル、ドキュメンタリー映画作家のローラ・ポイトラスだ。今作はスノーデンの暴露とその真相に迫っている。映画は静かに描かれるが、スノーデンが2013年に香港でグレン・グリーンウォルドとローラ・ポイトラス監督に明かした「アメリカとイギリスの政府はパラノイア患者が抱く途方もない悪夢を超えるレベルで一般国民を監視している」という情報や、淡々と明かされる真実に震撼させられるだろう。
告発については知っていたとしても、本人から直接聞き、初めて公になる話を扱っている本作は、より一層印象的に描かれている。香港で約1週間身を隠し、まったく新しい生活を送るために姿を消すという、人生において絶対に引き返せないところまで来ていた、当時29歳のエドワード・スノーデンの単なる描写にも迫る作品だ。彼は動機について語り、ハワイの自宅には恋人に長期出張に出かけるというメモを残し、友人や家族と縁を切っているという事実や、刑務所に収監されるのはほぼ避けられないだろうという考えを明かす。
スノーデンが路上で本人と認識されないように鏡に映った自分の髪を後ろに撫で付け、火災警報器のテストでは彼らの会話を遮る大きな音に対して「もっと悪意のある理由が存在するのか」という疑問を口にしながら苛立つシーンがあるが、ありふれたディテールはスリラーのレベルにまで高められていた。理性的で、思慮深く、自信に満ち、脆さも秘めている好青年のエドワード・スノーデンを、ポイトラス監督は本質的な人物描写で映し出している。監督による強制は一切見られないが、彼には高潔さがあるのだ。
スノーデンは香港のホテルの部屋を後にし、ロシアへ亡命するための旅に出る。ポイトラス監督は取り残され、作品はエネルギーを失う。後半の章ではベルリンから、ブラジル、ブリュッセルへと舞台が飛んでいく。スノーデンとポイトラス監督の最後の接触は、我々を現状への満足から引き戻し、これは本当に現在進行中で今後もずっと続行するストーリーだということを思い出させる。